こんにちは!広報担当の山本です。
今回の映画レビューはこちら、「リリーのすべて」です。
2015年から順次公開され、ヴェネツィア国際映画祭において、LGBTやクィアカルチャーを扱っている映画の中から最高の作品に送られる「クィア獅子賞」を受賞しています。
この映画は世界初の性別適合手術をうけた実在の人物リリー・エルベを題材とした小説を原作としています。
監督は「レミゼラブル」を生み出したトム・フーパー。
主演はイギリス俳優エディ・レッドメイン!
「博士と彼女のセオリー」で一躍有名になり「ファンタスティックビースト」の主人公として日本でも知名度をあげましたね。
美しく中世的な顔立ちをしているエディくんですが、その儚げな雰囲気、瞳に宿る確固とした意思の強さ、まさにはまり役でした。
あらすじ
1920年代、デンマークで同性愛が犯罪の時代。アイナー(後にリリーと改名。エディ・レッドメイン)とゲルダ(アリシア・ヴィキャンデル)は互いに画家であり、夫婦だった。
ある日、肖像画家であるゲルダのモデル(ダンサーの肖像画)が来れなくなり、アイナーにストッキングをはかせて足のモデルを頼む。後日ゲルダは冗談でアイナーを女装させ「リリー」という女性としてパーティーに連れて行く。そこで男性と親しげにする「リリー」に困惑するゲルダ。その日からアイナーは「リリー」として過ごす日々が多くなり…
史実を元にした、トランスジェンダーの夫とその人生に幕をおろすその時まで側で支え続けた妻ゲルダの、苦しみ、葛藤、愛。理解を得ることが難しい時代においても、女性の身体を求め続けたリリーを描いた作品です。
エディ・レッドメインがとにかく美しい
エディ・レッドメインは184cmある男性ですが、女性の姿がとても美しい。とにかく予告を観てほしいです。
これだけでこの映画、見る価値があります。
だんだんと男性の姿でさえも美しくなっていくその変化が素晴らしい。
また、その繊細な演技から目が離せません。
顔の表情筋の痙攣、これが一番感動しました。肉体が精神的負荷を受けた時の生理現象まで表現しています。また、細やかな女性の所作を、最初はみよう見まねでまねをし、それを我慢できなくなって行く姿。「リリー」が「リリー」になっていく過程を丁寧に丁寧に演技しています。さすがオスカー俳優エディ・レッドメイン…。
イギリス俳優はその演技力の高さがよく評価されますが、エディもその一人ですね。
彼はオスカー受賞時、憑依型の俳優と評されました。史実の人物が映画の中に再び現れたと錯覚させる程の素晴らしい演技で、今回もまた「リリー・エルベ」を憑依させていました。
「リリー」という存在
アイナーは妻を愛する良き夫です。ですが、「リリー」に命を与えたことで自分の欲求に逆らえなくなって行きます。「女性になりたい」「美しい服をきたい」「母になりたい」
その姿は一見わがままなようにみえますし、周りも自分も辛くなっていく姿は痛々しいです。
妻のため、と放射線の治療をおびえながら受けるもそのことに傷つく姿は胸が苦しくなります(この時代のLGBTに対する医療方法や扱いも描かれています。どれだけLGBTの人が生きづらい時代だったのか。本人達も原因が分からないまま苦しみ、今では考えられないような診断が平然と下されていました。精神障害といわれ精神病院へ収容されそうになったり、性的倒錯と診断されたり、根拠の無い治療が推進されたり、理解も知識もない時代。この時代はたしかに存在していたことを再認識させられました)
彼は彼なりに努力をしたかった。でも彼女、「リリー」こそがほんとうの自分だったんだな、と思います。
リリーは世界初の性転換手術のため、映画では2回。実際には5回手術をしているそうです。
映画では女性器を形成する手術で、実際には子宮をとりつける手術で亡くなっています。
妻ゲルダについて
ゲルダがなぜアイナーを支え続けたのか。
史実ではゲルダ自身もバイセクシャルかレズビアンだったのではという話もあります。
当初、画家としての知名度はアイナーがうえで、ゲルダは評価を得ることが出来ませんでしたが、
リリーをモデルにしたことで画が売れるようになりました。
ゲルダはリリーの死後もリリーを描き続けたといいます。
その複雑な愛と葛藤、どこまでも考えさせられます。
エディくんの女装姿みたいけど話重そうだな…とおもって嫌煙していましたが、
ほんとうに観て良かった映画でした。
昨今、LGBTについては色々なところで議論されています。
このことを考える良い機会にもなりますし、なによりそれぞれの心の機微が美しい映画なので
是非、観て頂けたらと思います。